飲食店禁煙化って根本的な解決なの?

全ての飲食店を含む屋内施設での禁煙化が議論されています。僕はイギリス(禁煙国)に長期滞在していた経験があってタバコも吸うので正直余計なことすんなよ...と思うのですが、まあ多くの人には良いニュースなんじゃないかなと思います。そしてさらに良いなと思うのは明らかにオリンピックを意識しているということ。いずれ別の記事で書きたいと思いますが、64年の東京五輪をはじめとして少なくとも過去の日本でのオリンピックでは、オリンピックを言い訳にさまざまな改革が行われて来たわけです。でそれらは良い遺産を残しています。首都高がなかったら結構困る人多いでしょ?東海道新幹線とか64年を逃したら日本で長距離高速鉄道が開通したのは80年代になってから、とかなってたんじゃない?

改革ということは、逆に今までは放置されていたということです。疑問に思ったのは、なぜ日本では屋内施設での禁煙が義務化されてこなかったのかということです。

 

 

 

経緯を見る前に、日本の禁煙事情の現状を軽く見てみます。僕はミレニアム世代なので全く知らない世界なのですが、昔は飛行機とか新幹線とかでも吸えたんですよね?考えられない。

それが90-00年代に変化しました。まずJR, JAL, ANA, 私鉄などのほぼ国営の民間企業が「公共の場所」での喫煙を全面的に禁止しました。続いて地方自治体が市町村役所や都道府県庁での分煙・禁煙を実施します。「公共の場所」だから。こうしてひとまず禁煙化が進みました。

逆に海外の先進国では屋内の喫煙が禁止されています。逆に路上喫煙を禁止してる国ってほとんどないのでは?面白いギャップです。建物の外を禁じるか、中を禁じるか。

 

 

 

じゃあその差が生まれた背景を見ていきます。海外は労組の圧力から、日本は外圧から禁煙化が進められたという違いがあります。アメリカやイギリス・西ドイツなどでは労働者の権利を守ることを目的に、法制化が進みました。だから「屋内の禁煙」が始めから目的だったんです。

日本では基本的に外からの圧力がきっかけになって規制が行われて来ました。健康に関する国際枠組みに加盟したり条約を批准する上で国内での法規制が必要だった訳ですね。でも屋内全面禁煙にすると反発があるから、官庁や自治体・第三セクターといった「公共の場所」でまず禁煙にしました。簡単だから。それに続いて路上喫煙の取り締まりが進みます。これも「公共の場所」だからなわけですが、本当の理由は行政側に管理権があるからです。民間に「タバコ吸うな!」と言うのと、自分の管理する土地で「ここでは禁煙です」って言うのを比べたら当然後者の方が簡単ですよね。

まあ結果オーライ。性質は異なりますが日本でも禁煙化が進んできました。ただ問題は対応が遅れた点です。世界で初めて法律によってタバコのテレビ広告を禁止したのは1965年のイギリスですが、日本で禁止されたのは1998年。しかもこれ、自主規制です。法律はまだできてません。今までは海外のスタンダードが確立されるのを待たないと進んできませんでした。

 

 

 

なんでその差が生まれたんでしょう。なぜ日本でこういう法整備がされなかったんでしょう?昔の官僚も海外のレポートくらい読んでその潜在的な危険性もわかっていたでしょうに。

インセンティブがなかったからですよね。たしかに禁煙化したら国民の健康は向上するけど、それで自分、というか厚生省はどう得すんの?って話です。むしろタバコを吸わなくなったら病気が減って自分たちの予算も削られるかもしれません。

政治家にしても、飲食店で全面禁煙にしたら反発はまあ来ますよね。実際今それが問題になってるわけで。要は規制しても自分が得しないわけです。それはそれで理解できる動き方だと思います。民間に務めたら自社の利益を最大化することが責務であるように、厚生省だったら厚生省の権益を最大化すること自体は、理解できる行動原理です。

じゃあどうしたらテレビ広告の禁止が30年早まったでしょう?世界で最初に警告文を義務化する国になるにはどうするべきだったでしょう?

省庁の政策を投票制にすればいいんじゃないでしょうか?得票数に応じて追加予算を割り振ります、みたいな。そしたらこぞって各省が今まで権益の関係でできなかったことが出来るようになるんじゃない?だって獲得すべきものは権益ではなく国民の支持だから。それが自分の利益に直接影響する訳です。

 

制度が変われば人の動き方も変わります。変えましょうよ。

 

 

 

ということでした。